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エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究 その1

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エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか

エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか

◆第二章 カウンセリングおよびサイコセラピーがもたらす効果*1
過去30年のメタ分析を要約すると、カウンセリングや心理療法の平均効果量は、治療なしの統制群と比較して平均.75〜.85程度になる (Lambert & Ogles, 2004; Wampold, 2001)。これは治療を受けた者の約80%が、治療を受けない者より大きな改善を示したことを意味する。またこの結果は、多くの内科的・外科的処置の平均的な総合効果量である0.5よりも相当大きな値を示している。



また約6割は、単なる改善ではなく臨床的に「正常」とされるレベルまでの改善、すなわち臨床的に有意な改善 (Clinically Significant Improvemnt)を示す (Hansen et al., 2002)。



では、問題の改善にはどのくらいのセッション数が必要なのだろうか。Hansen et al. (2002)によれば、50%のクライエントが好転の基準を満たすのに必要な治療回数 (EB50)は10〜20回とされている。しかしながら、75%が同様の基準を満たすのに必要な治療回数は問題や症状の種類によってかなりの開きがあるため、一概には言えない (Kopta et al., 1994)。



またこうした効果は、どの程度持続するのだろうか。いくつかのフォローアップ研究によれば、こうした治療の結果は比較的維持されるようであるが、18か月以上の期間になると効果は相対的にあまりよくないという報告もある (Westen et al., 2004)。ただし、それほど長期的な追跡調査は、研究の数自体が少ない。そのため、治療の長期的な効果に関する知見はまだ十分に確立されているとは言えない。



心理療法は、薬物療法に比べ同等 (Chilvers et al., 2001)あるいはそれ以上の効果を示す (Gloaguen et al., 1998)。また、鬱の再発率については、認知療法の方が薬物療法よりも低い (DeMatt et al., 2006)。ただし、より重篤な内因性鬱に対しては薬物療法の方が再発率が低いとする研究も見られるが、これらは最近の抗うつ薬が登場する以前の研究である。



また、両者の組み合わせについては結果が混在している。重篤あるいは内因性の鬱のケースの場合、薬物療法心理療法の組み合わせが効果的だが、それ以外の症状の場合、効果の変容はあまり見られない。



◆用語:効果量 (effect size)
よく知られているように、ほとんどの統計的仮説検定は、サンプル数が大きくなるほどp値が低下する。従って、統計的仮説検定で有意な結果が得られるか否かもサンプル数に大きく依存する。



そのため、実質的にはわずかな差であっても「有意差あり」となる結果も多く、その有意差が実質的な意味を持つか否かは別の問題となる。



そこで、平均値の差(以外にも使うのだが)が十分に意味のあるものであるかに用いられる指標が「効果量」であり、これこそがメタ分析の主役である。



効果量にはいくつかの算出法があるが、最も一般的なものはChoenのdである。
行動科学においては

d=0.2を小さな効果 d=0.5を中程度の効果 d=0.8を大きな効果

と解釈することが一般的である。



◆用語:中央値有効量 (Median Effective Dose: ED50)
治療を受けた人々の内、50%の人が臨床的改善を見せるまでに必要な介入量のこと。75%の人が改善を見せるまでに必要な介入量はED75である。

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エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか

エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか

*1:文献は基本孫引きです